(渡辺明次著 講談社現代新書)
という本を読んだ。 自分の住む美山町(現南丹市)も過疎化が深刻で村おこしが必要だ。 なんで必要なんか?という問いもあるかもしれないけれど, とりあえず,過疎化している地域は村おこしが必須となっている。 言うたら,過疎地のどこもかしこも村おこし村おこしと騒がずにいられないのがいつの頃からか定着しているけれども, ただでさえ人口減少傾向に突入した日本のどこでもかしこでも村おこしが成功するはずはないのかもしれない。 この本はバブル全盛の1990年に書かれており, 今から16年も前で社会情勢も大きく変化しているはずだけれども, 訴えかけてくるものは未だに大きいように感じられた。 「町づくりの本来の目的は,もう一つの産業を町に加え, 町の構造を人間的なものにつくり変えるということである」 そのために 「都市を産業軸から自然軸によって発展する町に変えていくことが, 現代の町づくりの意味であろうと思う」 と筆者は語る。 ひとつとても興味深かったのは, 人口8000人の漁村にできたオランダ村の話だ。 この本が書かれた前年の来場者は150万人に達し, 年収も95億円にもなっていたそうだ。 けれども,筆者はこれが本当の意味での村おこしにはほど遠いと指摘している。 その理由は, 「本当の漁村は,・・・観光客からかくされて」 おり, 「オランダ村は町民が楽しむ所にはなっていない」 からだと言う。 この本が書かれた10年後の2001年にはオランダ村は経営不振のため閉鎖されている。 オランダ村の閉鎖が著者の指摘に関係しているかどうかはさておき, 結果としてオランダ村は根付かなかったということを示唆するには十分なような気がする。 本書で取り上げられている村おこし・町づくりの成功例は, こうした観点から選ばれているようで, それぞれの村おこし・町づくりの歴史は実に半世紀以上の月日を経て行われているところばかりである。 村おこし・町づくりのきっかけは, 婦人会の催しであったり,富豪による寄付であったり,行政主導であったりといろいろなのだけれども, 共通するのは,住民にとって楽しめる居心地のよい空間を作り上げているところだろうか。 そして,住民の手による地道な活動が,やがて発展して村や町を活気づけているということだ。 著者は建築家であるのだけれども, 日本に一時期(特にバブル期に)ありがちだったハコ型の,つまりは税金を投入して催場ばかりを建ててしまうという発想にはハッキリと距離を置いているように見える。 そのあたり,サブタイトルが「まち活性のソフトウェア」とあるところにも現れている。 このサブタイトルがなければ,おれもこの本を読んでみようという気にはならなかったかもしれない。 結局は,人が集まるのはモノがあるからではなくて,魅力的な「ヒトの生活」があるからということなのかもしれない。 ちなみに,この本は今では絶版になっているので書店では手に入りません。 mixiのおすすめレビューでも本書は登録されてなかった。
by morisho5
| 2007-01-26 01:39
| 本
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